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線虫における減数分裂の際の対合とインプリンティングされたX染色体のクロマチン構築

Nature Genetics 36, 1 doi: 10.1038/ng1283

哺乳類におけるX染色体の不活性化にみられるように、個々の遺伝子座もしくは染色体全体の遺伝的刷り込み(インプリンティング)は、配偶子形成の間に確立あるいは解消される。そのため、親個体においてこの過程に異常があると、子孫に障害が現れる可能性が生じる。我々は、線虫Caenorhabditis elegansにおいて、精子で特異的に起こるヒストンH3の修飾によるクロマチンの変化にもとづいたX染色体の刷り込みについて報告する。エピジェネティックな刷り込みは、精子形成の間に確立され、その子孫における安定性は、親個体の生殖細胞における減数分裂の際に対合する相手の有無によって影響を受ける。我々は、減数分裂の際に対合する相手のいないDNA、すなわち通常の雄個体におけるX染色体のDNAは、ヒストンH3のLys9部位(H3-Lys9)がメチル化され、その結果として不活性化されうることを見いだした。減数分裂の際に対になっていないDNAを不活性化の標的とすることは、ゲノム防御の機構として働きうるものであり、それゆえX染色体の不活性化の刷り込みにおいて、そしてひいては性染色体の進化において、進化的に保存された一定の役割を果たしてきた可能性があると考えられる。

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