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地球規模でみたヒトミトコンドリアDNAとY染色体の構造パターンは、男性に比して高い女性の移動率に左右されない

Nature Genetics 36, 10 doi: 10.1038/ng1428

ヒトの集団構造にみられる地球規模のパターンは、集団間移動率の影響を受ける可能性があり、移動率は女性では男性よりほぼ8倍高いとされている。この移動率の差は主として、女性が結婚相手の居住地に移動するという、広くみられる慣習である父方居住性のためである。本論文で我々は、10の集団(アフリカが4、ヨーロッパ、アジア、オセアニアが各2)由来の389個体からなる同一集団でのY染色体およびミトコンドリアDNA(mtDNA)のDNA配列の変異(ばらつき)を比較することで、この仮説の直接的な検証を行う。今回、Y染色体の変異を分析する新しい方法を導入した。本法は、密集度の高い一塩基多型を同定し、既存のマーカーに依存することなく全個体の完全塩基配列決定を可能にし、mtDNAと直接比較を行う。我々は、集団間における多様性の全体的な割合(ФST)がY染色体では0.334、mtDNAは0.382であることを見いだした。集団間での遺伝的差異は、Y染色体およびmtDNAに関して、検証対象としたすべての地理的条件でほぼ同じであった。特定地域の集団間の遺伝的多様性には父方居住性が重要であるのかもしれないが、大陸や地球レベルの規模でみた場合、男性を上回る女性の移動率の高さが遺伝的構造パターンを決定してはいない。

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