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シロイヌナズナにおけるFVEを介した低温応答と花成時期の間の遺伝学的関連性

Nature Genetics 36, 2 doi: 10.1038/ng1298

植物は、低温により、凍結温度への耐性を高めるタンパク質をコードする多くの遺伝子の発現を誘導する。低温と乾燥に応答するシス調節配列であるC反復/乾燥応答エレメント(C/DRE)が、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において、ストレス誘導性遺伝子RD29AおよびCOR15a に同定されており、また、さまざまな植物において、他の低温誘導性遺伝子に見いだされていた。C/DRE結合因子/DRE結合タンパク質 (CBF/DREB)は、低温順化応答に必須の要素であるが、そのシグナル伝達の経路およびネットワークはほとんど知られていない。今回我々は、標的遺伝子に対する遺伝学的な手法を用いて、低温応答遺伝子の異常発現が認められたシロイヌナズナの変異体 (acg)を分離し、CBF/DREB系路の負の調節因子としてACG1を同定した。acg1では花成時期が遅延し、MADS-boxタンパク質をコードしていて花成抑制因子であるFLOWERING LOCUS C(FLC)の発現が亢進していた。我々は、acg1が自律的経路にかかわる FVE遺伝子の対立遺伝子であり、FVEを欠損させる変異をもつことを示した。FVEは、哺乳類の網膜芽細胞腫関連タンパク質のホモログをコードするが、このタンパク質は転写抑制に関与するヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC)複合体の構成要素の1つである。また、我々は、植物がFVEを介して断続的な低温ストレスを感知し、FLCの発現を増加させて花成時期を遅延させることを明らかにした。花成時期と低温応答を制御するFVEの2つの役割は、生存率を高めることによって植物に進化的な利点をもたらすことかもしれない。

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