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遺伝子重複による遺伝子調節ネットワークの発達

Nature Genetics 36, 5 doi: 10.1038/ng1340

転写調節ネットワークの大規模な解明が始まりつつあり、またそのネットワークの構造的原理の一部が理解されはじめているが、これらのネットワークを生み出した進化的メカニズムについてはまだほとんどわかっていない。本論文では、ネットワークの進化における遺伝子重複の役割について調べた。遺伝子重複は、ゲノムのなかで新しい遺伝子を作るための推進力である。少なくとも50%の原核生物遺伝子と90%以上の真核生物遺伝子は遺伝子重複の産物である。調節ネットワークのなかで転写にかかわる相互作用は、多彩な構成要素から成り立っており、新しい相互作用を生み出す遺伝子重複の過程もより複雑である必要があろう。我々は、遺伝子重複による過程について可能なシナリオを明らかにし、これらが原核生物の大腸菌Escherichia coliと、真核生物の出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて、調節ネットワークを形成することを示す。遺伝子重複はネットワークの進化において重要な役割を果たしてきた。既知の調節相互作用の3分の1以上は、重複によって生じた祖先転写因子もしくはその標的遺伝子に由来しており、相互作用のおおむね2分の1は遺伝子重複のあとの分岐の過程で獲得されたものである。さらに進化は、すべての調節回路やモチーフを作るのではなく、遺伝によって受けついだ相互作用を重複させることで徐々に増やしてきたのだということを結論としてつけ加える。

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