Article 異種間遺伝子発現解析によって同定された、癌抑制遺伝子KRAS2の発現パターン 2005年1月1日 Nature Genetics 37, 1 doi: 10.1038/ng1490 高度な遺伝子ターゲティング法を用いることにより、ヒトの腫瘍に存在する遺伝的変化を正確に再現するマウスの癌モデルを作製することは、現在では比較的容易になってきた。課題として残っているのは、腫瘍の進行にともなう分子レベルのメカニズムについて、そうしたモデルがヒトの病気をどの程度忠実に反映できているかの評価である。本論文では、マウスの癌モデルとヒトの腫瘍を、遺伝子発現プロファイルで比較する方法について述べる。Kras2によって起こる肺癌モデルの解析にこの方法を適用したところ、この方法がヒトの肺腺癌とよい関連性を示すとわかった。すなわち、モデルを評価することができた。さらに、KRAS2について既知の変異の状態についてヒト腫瘍を解析しただけではKRAS2の活性にもとづく遺伝子発現の特徴を同定できない場合について、マウスとヒトのデータを統合してみると、ヒト肺癌におけるKRAS2の変異による遺伝子発現の特徴を明らかにすることができることを見いだした。この遺伝子発現の特徴が重要なものであることは、短鎖ヘアピンRNAを用いて癌遺伝子Kras2を抑制する手法により確認できた。これらの実験によって、ヒトの癌においてKRAS2の突然変異の状態を示す遺伝子発現パターンと、癌遺伝子KRAS2の活性化のもつ潜在的な影響の両方を同定することができた。こうした研究手法は、動物モデルのゲノムレベルの解析が、ヒトの病気を調べる戦略を提供するものであることを示している。 Full text PDF 目次へ戻る