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酵母の祖先型アルコール脱水素酵素を再現する

Nature Genetics 37, 6 doi: 10.1038/ng1553

多肉果に生息する現生酵母は、糖質を、ピルビン酸を経由して大量のエタノールに変える。ピルビン酸は二酸化炭素を失ってアセトアルデヒドを生成し、アセトアルデヒドはアルコール脱水素酵素1(Adh1)によってエタノールに還元され、このエタノールが蓄積していく。酵母はその後、Adh1の相同タンパク質で、348アミノ酸のうち24個が異なるAdh2を利用して、貯まったエタノールを消費する。多くの微生物はエタノール中で生育できないため、蓄積エタノールのおかげで酵母は果実に含まれる資源を競合微生物から守ることができると考えられる。本論文で我々は、Adh1とAdh2の一番近い共通祖先であるAdhAの再現を報告する。AdhAの反応速度論的性質は、祖先型酵素がエタノール消費ではなくエタノール生成に最適化されていたことを示唆している。このことは、Adh1とAdh2の重複が起こる以前には、酵母が後々の消費のためにエタノールを貯めるのではなく、むしろAdhAを利用して解糖経路で生成されたNADHを再利用していたという仮説と一致する。同義置換による年代決定により、Adh1とAdh2の重複は、エタノール蓄積に関与するその他のいくつかのタンパク質の重複が生じた時期とほぼ同じ年代の、おそらく多肉果が出現した白亜紀に起こったことが示唆される。これらの結果から、上記の酵素の化学反応をシステム解析することで、これらの化学反応を地球生態系の変化の時期に結びつけることができるようになり、惑星規模のシステムバイオロジーへの小さいが貴重な一歩とすることができるだろう。

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