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核型異常は生殖細胞の遺伝子型と癌細胞の表現型の不一致を生みだす

Nature Genetics 37, 8 doi: 10.1038/ng1612

メンデル遺伝の本質は、当該の表現型を発現しているすべての組織が同じ2倍体の核型をもつと想定しているが、癌細胞においてはしばしばそうでない場合がある。白血病や他の悪性腫瘍の多くの症例では、染色体の無作為でない獲得によって、トリソミーが存在する。我々は、癌細胞における染色体獲得の本質および遺伝子型と表現型の一致に対するその影響を評価するために、チオプリンS-メチルトランスフェラーゼ(TPMT)、γ-グルタミルヒドロラーゼ(GGH)および還元葉酸輸送体(SLC19A1)をコードする遺伝子における多型を利用して解析した。体細胞におけるTPMTとGGHの活性は生殖細胞の遺伝子型と一致したが、一方、白血病細胞における活性は、染色体数、および獲得した染色体が含む対立遺伝子が野生型であるか変異型であるかによって決定された。野生型のTPMTあるいはGGH対立遺伝子を含む染色体をもう1本獲得した白血病細胞は、それぞれチオグアニンヌクレオチドあるいはメトトレキセートポリグルタメートの蓄積が有意に少なかった。これらの遺伝子に関しては、獲得染色体のうち野生型対立遺伝子を含む染色体と変異型対立遺伝子を含む染色体とはほぼ同数であった。したがって、染色体の獲得により、生殖細胞の遺伝子型と癌細胞の表現型の一致を変化させることができる。このことは、対立遺伝子特異的で量的な遺伝子型決定が癌の薬理ゲノム学を明確に定めるために必要であるかもしれないことを示している。

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