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ショウジョウバエの初期発生においてアノテーションされていない転写の生物学的機能

Nature Genetics 38, 10 doi: 10.1038/ng1875

多くの動物や植物のゲノムには、現在の機能アノテーション(注釈付け)による予測よりもはるかに広範囲の領域が転写されている。ところが、このアノテーションされていない転写領域の生物学的機能は、ほとんど明らかになっていない。ショウジョウバエDrosophila melanogasterの胚発生において転写が検出されている転写配列のおよそ7%と23%は、それぞれ遺伝子間領域とイントロン領域である。我々は、アノテーションがされている領域とされていない領域との協調的な転写をコンピュータ解析し、すべてのアノテーションされていない転写配列のうち、控えめに見積もって29%が、機能の明らかなタンパク質をコードする遺伝子の失われたエキソン、もしくは、代替エキソンとして働くのではないかと考えた。また、遺伝子間に存在する転写領域の15.6%が、発現しているタンパク質コード遺伝子の11.4%によって使われる転写開始部位(TSS)の失われたもの、ないしは代替として働くと予測された。新たに特定された5’エキソンの内部か近傍のPエレメント突然変異を同定することによって、これまで明らかになっていなかった突然変異の遺伝子座への対応づけが可能になった。以上のように、本研究成果は、少なくとも85%のハエゲノムが転写され、プロセシングを経て、ハエゲノムの最低30%に相当する成熟型の転写産物が得られることを示している。

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