Article チンパンジーとヒトのY染色体の塩基配列の比較解析は複雑な進化の道すじを明らかにする 2006年2月1日 Nature Genetics 38, 2 doi: 10.1038/ng1729 哺乳類のY染色体は常染色体やX染色体とは異なる特性をもつ。271 kb のY染色体上の偽常染色体領域1、および12.7 MbのY染色体雄特異的領域を含む、チンパンジーのY染色体(PTRY)の配列解読が終了したのでここに報告する。ヒトのY染色体(HSAY)とPTRYにおける配列の違い(1.78%)は、ゲノム全体における違い(1.23%)よりも大きく、この結果は、Y染色体の進化速度が上昇していることを証明するものである。PTRYにおいて、解析した19のタンパク質コード遺伝子には、それぞれに少なくとも1つの非同義置換が起こっており、さらに11の遺伝子では、非同義置換の速度が同義置換の速度よりも速くなっていた。これは、淘汰圧の緩和、正の淘汰、もしくはその両方が起こったことを示唆している。また、HSAYセントロメア周辺領域からの200 kbのゲノム領域が欠失していること、HSAYにおいてAluファミリーの挿入頻度が上昇していること、PTRYにおいてL1エレメントやLTR型レトロトランスポゾンが蓄積していることなどが明らかになり、種特異的なゲノム構造の変化が浮き彫りになった。ヒトとチンパンジーの祖先型Y染色体を再構築したところ、種分化以降の約500万年から600万年の間に我々のゲノムに起こったダイナミックな構造変化の道筋が明らかになった。 Full text PDF 目次へ戻る