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酵母の異系交配と組換えについての集団ゲノム解析

Nature Genetics 38, 9 doi: 10.1038/ng1859

出芽酵母Sacchromyces cerevisiaeは、人類によって数千年にわたってワイン、ビール、パンの製造に用いられてきた。つい最近では、真核生物の生物学研究やゲノム解析のための重要なモデル動物になっている。ところが、酵母がもつ本来のライフサイクルや集団遺伝学についてはあまり知られていない。重要な疑問の1つは、遺伝的に異なる酵母の菌株が自然界で交配し、組換えが生じるかどうかということである。我々は、複数の個体のゲノム配列を使って、種の進化の過程を推論する方法を開発し、その方法を3種類のS. cerevisiae菌株とその姉妹種S. paradoxusに由来する全ゲノム配列データに適用した。酵母菌株間の配列のばらつきに一定の法則がみられること、すなわち、祖先種におきた組換えによって、共通の系図関係をもつ遺伝子断片のモザイクが生じていることがみいだされた。配列の相違や共通断片の推定平均サイズ(およそ2000bp)から、どの菌株2種をとっても、最も新しい共通祖先以後におよそ1600万回の細胞分裂を経ているが、この間に314回の異系交配しか起こっていない(細胞分裂5万回ごとに異系交配が1回起こる頻度に相当)と推定された。特定の領域に存在する多型の割合にみられる相関は、酵母における連鎖不平衡がキロベース単位に及ぶはずであることを示している。本研究成果は、S. cerevisiaeの遺伝子型と表現型の間の関連についての集団スケールのゲノム解析の最初の根拠となるものである。

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