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マラリア:熱帯熱マラリア原虫のゲノム規模の地図と多様性

Nature Genetics 39, 1 doi: 10.1038/ng1930

マラリア寄生虫である熱帯熱マラリア原虫は、遺伝的変異をもつことにより、化学合成治療薬やワクチン、あるいはマラリアベクター制御戦略に打ち勝ち、それが、マラリアの世界的な高罹患率と高死亡率の主原因となっている。本論文で我々は、熱帯熱マラリア原虫のゲノム全体にわたる遺伝的変異の探索についてはじめて報告する。地理的に異なる16のマラリア原虫(Plasmodium falciparum)について全塩基配列決定をおこない、46,937のSNPを同定し、熱帯熱マラリア原虫間で豊富な多様性がある(π=1.16 × 10-3)こと、遺伝子の機能と強い相関があることを証明した。我々は薬剤耐性寄生虫において、進化的な選択的一掃作用を示唆する特徴をもった多数の領域を同定した。その1つとして、今回はじめて見いだされた、ピリメタミン耐性寄生虫における多型の非常に少ない160 kb領域がある。我々はさらに世界中の54種を用いて、20のゲノム領域にわたるSNPの遺伝子型判定をおこない、その特徴を調べた。これらのデータはアフリカ、アジア、アメリカのグループ間の集団構造をはじめて定義づけするもので、連鎖不平衡の程度を明らかにするものである。その程度は、アフリカの寄生虫では比較的短い距離であり、アジアの寄生虫ではより長い距離にわたるものであった。本論文は、熱帯熱マラリア原虫の遺伝的多様性に関する最初の地図を提供し、これが、最近の自然選択を受けた遺伝子の同定や、この寄生虫の集団遺伝学を理解する上で役に立つことを説明するものである。

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