Article 癌の発現プロファイル:前立腺癌の進展に関するmolecular concept統合モデルの構築 2007年1月5日 Nature Genetics 39, 1 doi: 10.1038/ng1935 前立腺癌の発現プロファイル解析に対するさまざまな取り組みにもかかわらず、組織学的に観察される癌の進展に関係する遺伝子変化や生物学的プロセスは、明らかになっていない。本論文では、レーザーキャプチャーマイクロダイセクション法によって、101個の細胞集団を単離し、良性上皮性腫瘍から転移性腫瘍へと、前立腺癌の進展における発現プロファイルを解析した。そして、発現プロファイルの解析を、14000以上の“molecular concept”(生物学的に結びついている遺伝子群のセット)に照らし合わせることで、癌の進展に関する統合モデルを作成した。molecular conceptのうち、癌の進展で重要と思われる過渡期境界を決めているものには、タンパク質生合成、ETS(E26 transformation-specific)ファミリー転写因子の標的遺伝子、アンドロゲンシグナル伝達、細胞増殖がある。注目に値するのは、低悪性度前立腺癌(グリーソンパターン3)と比べて、高悪性度前立腺癌(グリーソンパターン4)では、転移性前立腺癌と同じように、アンドロゲンシグナル伝達に特徴的な発現が減少していることである。これは、脱分化を示しており、悪性度と予後の臨床的関連性を説明すると考えられる。したがって本研究成果は、molecular conceptを対照した遺伝子発現プロファイル解析が、癌の生物学を理解するために有用であることを示している。 Full text PDF 目次へ戻る