Article イヌの遺伝学:ゲノム規模の関連解析によるイヌのメンデル形質の効率的なマッピング法 2007年11月1日 Nature Genetics 39, 11 doi: 10.1038/ng.2007.10 イヌには遺伝的疾患が数百存在し、またそのゲノム構造が明らかなことから、疾患の原因となる遺伝子をマッピング(染色体上位置の決定)するのに適している。本論文では、およそ27,000のSNPを含む遺伝子型決定用アレイの開発について報告し、さまざまな犬種におけるメンデル形質のゲノム規模の関連マッピングがわずか約20頭のイヌで可能であることを示す。具体的には、白斑形成の主要遺伝子座(S)と、ローデシアン・リッジバックで見られる逆毛(リッジ)という、メンデル遺伝する2つの形質のマッピングを行なった。両方の形質は、別々の、しかしともに1 Mb以下の領域にマッピングされた。続いて、2種類の犬種において白斑形成の主要遺伝子座Sの詳細なマッピングを行い、その位置を、色素沈着に関連した遺伝子MITF内に含まれるおよそ100 kbに絞り込んだ。次に、白色と地色を呈するハプロタイプの塩基配列を完全に明らかにし、MITFの色素細胞特異的プロモーターの領域にその制御に関連すると思われる変異を見つけた。本研究成果は、ある犬種においてゲノム規模の関連マッピングを行い、続いて複数の犬種に対する詳細なマッピングを実施することで、きわめて効率的な、かつ、ほとんどの場合は納得できる形質マッピングが可能なことを示すものである。そして、こういったやり方による形質マッピングから、イヌ、ひいてはヒトの健康や疾患についての手がかりが得られると期待される。 Full text PDF 目次へ戻る