ミトコンドリア：ミトコンドリアの点突然変異はマウスの本来の寿命に影響を及ぼさない

ミトコンドリアに起きた突然変異が哺乳類における老化の原因となるのか、もしくはただ関係しているだけなのかについては、激しい論争が続いている。本論文では、高感度の新しい分析法を用いて、ミトコンドリアの突然変異と寿命との関連性の再検討をおこなった。我々は、in vivo条件下でマウスミトコンドリアのゲノムに生じる単一塩基対レベルでの変化の速度を測定し、マウスミトコンドリアにおける突然変異頻度が以前報告された値よりも10倍以上低いことを明らかにした。ミトコンドリアの点突然変異の頻度は加齢にともなって11倍増大することが観察されているが、ミトコンドリア変異誘発マウスでは、正常マウスに比べて500倍高い突然変異荷重を課されているにもかかわらず、急激な老化の促進を示唆するはっきりとした特徴がみられなかった。したがって本研究成果は、ミトコンドリアの突然変異がマウスの寿命に影響を及ぼさないことを、強く示唆するものである。