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プロモーターとメチル化:ヒトゲノムのプロモーター領域におけるDNAメチル化の分布状態、遺伝子のサイレンシング、進化に及ぼす影響
Nature Genetics 39, 4 doi: 10.1038/ng1990
DNAメチル化のシス(cis)作用性調節領域での機能、およびその遺伝子発現への影響についての手がかりを得るため、初代培養のヒト体細胞と生殖系列細胞の16,000のプロモーター領域におけるメチル化、RNAポリメラーゼ占有、ヒストン修飾の各状況を調べた。体細胞では、CpGジヌクレオチドをあまり含まないプロモーター領域が高度にメチル化されており、このようなメチル化の状態によってプロモーターの活性は妨げられないことがわかった。こうしたメチル化は雄性配偶子で観察され、その結果、人類と霊長類との相違で判明したように、進化の過程においてCpGジヌクレオチドが失われてしまう。これに対して、CpGアイランドを多く含むプロモーターは、転写活性を示さない場合であっても、多くはメチル化されていない。CpGアイランドをそれほど含まないプロモーターは、体細胞でのde novoメチル化の選択的標的であるので、メチル化されている。とくに、体細胞において生殖系列特異的遺伝子の大部分がメチル化されていることは、DNAメチル化の新たな機能を示すものである。これらの結果から、プロモーターの配列と遺伝子の機能によって、プロモーター領域のメチル化の状態が予測できることが明らかになった。さらに、転写活性を示さずメチル化されていないCpGアイランドプロモーターでは、ヒストンH3のLys4のジメチル化のレベルが上昇していることが認められた。このことは、ヒストン修飾というクロマチンの目印によって、DNAのメチル化が起こらなくなっている可能性を示唆している。