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加齢:キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の神経線維腫症1型において、ニューロフィブロミンによるミトコンドリアの調節や抗酸化療法が寿命を延長する
Nature Genetics 39, 4 doi: 10.1038/ng2004
キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)において、NF1遺伝子の不活性化あるいは過剰発現によって引き起こされる神経線維腫症1型(NF1)の病態生理について検討した。NF1遺伝子変異体では、ミトコンドリア呼吸の減少や活性酵素種(ROS)産生の上昇にともなって、寿命が短縮し、熱および酸化ストレスに対する脆弱性が増した。NF1を過剰発現するハエでは、ミトコンドリア呼吸の増加やROS生産の60%減にともない、寿命が延長し、生殖適応度が改善され、酸化および熱ストレスに対する抵抗性が増した。これらの表現型効果は、Ras/Raf経路によってではなく、アデニリル・シクラーゼ/環状AMP(cAMP)/プロテインキナーゼA経路によって調節されることが明らかになっている。野生型キイロショウジョウバエにcAMP類似物処理を行うと、その寿命が延長した。また、NF1変異体にメタロポルフィリン触媒性抗酸化化合物処理を行うと、その寿命が回復した。したがって、ニューロフィブロミンは、ミトコンドリア呼吸やROS生産をcAMPを介して調節することで、寿命やストレスに対する抵抗性を調節している。また、NF1は、触媒性抗酸化物質を使って治療できる可能性がある。