RNA干渉：トランスジェニックマウスを用いた組織特異的で可逆的なRNA干渉

遺伝子組み換えマウスは、哺乳動物の遺伝子の機能を理解する上で強力なツールとなる。これらのモデルは伝統的に、トランスジェニックあるいはターゲティング法で不可逆的な突然変異を導入して過剰発現させていた。我々は、従来遺伝子の過剰発現に用いられていたテトラサイクリン（tet）反応性のシステムを使って、RNA干渉（RNAi）をマウスに対して用いることにより、内在性の遺伝子の発現を可逆的に制御する単純なトランスジェニックシステムを開発した。テトラサイクリン反応性のRNAポリメラーゼIIプロモーターによって転写される、マイクロRNA配列を用いた短いヘアピンRNAをもつトランスジェニックマウスが用いられた。このヘアピンRNAは、腫瘍抑制遺伝子のTrp53を標的としており、全身あるいは組織特異的に tet-on もしくは tet-off トランス活性化因子を発現しているマウスの系統と交配させることにより、可逆的に発現させることができる。いくつかの組織においてTrp53の可逆的ノックダウンを行うことができ、Trp53ノックダウンによって発達が促進されるリンパ腫においてTrp53の発現を元に戻すことにより、腫瘍を退化させることができた。この方法を用いれば、標的遺伝子を変化させないで、組織特異的にかつ可逆的に内在性の遺伝子をin vivoで調節することができ、基礎生物学と創薬標的の検証に対して広く応用できる可能性がある。