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自然変異:シロイヌナズナArabidopsis thalianaの硫酸イオン含量に関する自然変異はAPR2により高度な制御を受ける
Nature Genetics 39, 7 doi: 10.1038/ng2050
重要な農業形質の大部分は、栄養素の利用効率のような生理的形質であろうと、開花時期といった生育上の形質であろうと、複数の遺伝子による制御と、遺伝子と環境との相互関係による制御を同時に受ける。本論文では、野生型シロイヌナズナArabidopsis thalianaの登録名Bay-0とShahdaraとの硫酸イオン含量の違いが、土壌の窒素の利用効率と深く関係している主要な量的形質遺伝子座によって制御されていることを示す。遺伝学的解析および生化学的解析の結果を考慮し、さらに候補遺伝子探索(candidate gene approach)法を行って、硫酸イオン含量の違いをもたらす遺伝子をクローニングし、同化的硫酸還元経路の重要な酵素であるアデノシン5´-ホスホ硫酸還元酵素(APR2)の単一アミノ酸置換が酵素活性を低下させ、その結果、植物に硫酸イオンが蓄積されることを明らかにした。今回の成果は、自然変異が、既知遺伝子の新規対立遺伝子の供給源となりうる可能性を例証するものである。すなわち、自然変異は遺伝子機能や代謝経路の制御についての研究に役立つと期待される。硫酸イオン蓄積についての新たな知見は、硫黄肥料の利用やストレス防御の改善に影響を与える可能性がある。