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システム遺伝学:ショウジョウバエにおける複雑な形質のシステム遺伝学

Nature Genetics 41, 3 doi: 10.1038/ng.332

複雑形質の遺伝的な構造を定義することは、容易な課題ではない。というのも、表現型の差異は、環境が影響する複数の対立遺伝子の相互作用によって生じるものだからである。今回、私たちは、野生型由来の近交系ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)を用いて、生態学的に関連のある6つの形質について、ゲノムワイドに転写産物の量と表現型を定量化した。本論文では、遺伝的に変動する10,096の転写産物と、各個体の表現型で高い遺伝率を確認したので報告する。トランスクリプトームは遺伝的な相関を強く示す241の転写モジュールで形成されている。モジュールは、経路(パスウェイ)、Gene Ontologyのカテゴリー、発現の組織特異性、転写因子結合部位が共通の転写産物に富んでいる。転写産物どうしの接続性の高さは、遺伝子ネットワークとネットワーク中の他の遺伝子のアノテーションから予測された遺伝子の機能を推察させるものである。表現型の転写産物量への回帰は、生物学的に意味があり、相互に関連してそれぞれの表現型に影響を及ぼすような、転写産物のモジュールを形作る数百の遺伝子を関係づけている。異なる形質に関連するモジュールで転写産物が重複していることから、複雑な形質間の多層遺伝の分子的な基礎が推察できる。

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