Letter

心臓発生:Wt1はSnailおよびEカドヘリンの転写制御を介した心血管前駆細胞の形成に必要である

Nature Genetics 42, 1 doi: 10.1038/ng.494

心外膜の上皮・間葉移行(EMT)によって、冠状動脈の平滑筋細胞や内皮細胞、血管周囲や心臓の間質繊維芽細胞、心筋細胞を含む、さまざまなタイプの細胞に分化する心血管前駆細胞が生じるとの仮説が提唱されている。本論文では、Wilms′tumor-1(Wt1)をコードする遺伝子の心外膜特異的なノックアウトによって、間葉前駆細胞やその派生細胞の減少が引き起こされることを示す。我々は、Wt1が、EMTの2つの主要なメディエーターである、Snail(Snail1)およびEカドヘリン(Cdh1)をコードする遺伝子の直接の転写調節を介して、心外膜細胞および胚性幹細胞分化過程で、上皮表現型の抑制に不可欠であることを示す。いくつかの中胚葉系統はWt1ヌルの胚様体では形成されないが、これはSnai1の発現によって回復することから、これらの分化細胞が生じるためにはEMTが重要であることが浮き彫りになった。心血管前駆細胞やEMTを調節する分子機構についてのこれらの新たな知見は、心臓病の発症機序を解明する手がかりとなり、また、細胞を基盤とする治療開発の一助となりうる。

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