片頭痛はよくみられる発作性の神経疾患であり、通常、再発性の激しい頭痛発作と自律神経機能障害が認められる。希少性の単一遺伝子によるサブタイプを除けば、片頭痛についての遺伝子マーカーもしくは分子マーカーはこれまで確認されていなかった。今回、ヨーロッパの3箇所の頭痛外来から集められた片頭痛患者2,731例、および一致集団の対照例10,747例についてゲノムワイド関連解析を行い、8q22.1染色体上に、片頭痛との関連が認められるrs1835740のマイナー対立遺伝子を同定した(P=5.38×10−9、オッズ比=1.23、95% CI 1.150−1.324)。さらに、症例3,202例、対照例40,062例に対してメタ解析を行い、この関連の再現性を確かめた(全体のP=1.69×10−11、オッズ比=1.18、95% CI 1.127−1.244)。rs1835740は、MTDH〔AEG-1(星状細胞増加遺伝子1)ともいう〕と、PGCP(血漿グルタミン酸カルボキシペプチダーゼをコードしている)の間に存在する。リンパ芽球細胞株においてeQTL解析を行ったところ、MTDHの転写産物量がrs1835740と強い関連を示すことが判明した(P=3.96×10−5、このとき並べ替え検定によるゲノムワイドな有意性の閾値は7.7×10−5)。今回の結果は、rs1835740が片頭痛の遺伝的リスク因子であることを初めて示すものである。