生殖細胞のBRCA1に生じた変異は乳がんの素因になる。この素因に対する修飾因子を同定するため、BRCA1変異をもち、侵襲性乳がんであると診断された40歳以下の患者1,193人と、BRCA1変異をもち、乳がんを発症していない35歳以上の対照群に対して、ゲノムワイド関連解析を行った。さらに96個のSNPについて、BRCA1変異をもつ人5,986人(乳がん患者2,974人、非罹患者3,012人)に対して再現性を調べた。その結果、19p13に存在する5個のSNPがBCR1乳がん発症リスクと関連を示し(Ptrend=2.3×10−9からPtrend=3.9×10−7)、このうち2個のSNPは、発症リスクとの関連に違いを示した〔ハザード比(HR)が異なった。すなわち、rs8170はHR=1.26、95% CI 1.17−1.35、rs2363956はHR=0.84、95% CI 0.80−0.89〕。これら2つのSNPについて、地域住民もとにした乳がん患者6,800人と対照群6,613人で遺伝子型を調べたところ、エステロゲン受容体陰性乳がんに対する関連は類似しており〔rs2363956、対立遺伝子あたりのオッズ比(OR)=0.83、95% CI 0.75−0.92、Ptrend=0.0003〕を、エステロゲン受容体陽性乳がんでは逆の方向の関連を示した(OR=1.07、95% CI 1.01−1.14、Ptrend=0.016)。5個のSNPは、別個のトリプルネガティブ乳がん患者2,301人、対照群3,949人の関連解析を行った結果、トリプルネガティブ乳がんへの関連も示した(Ptrend=1×10−7〜8×10−5、rs2363956の対立遺伝子あたりのOR=0.80、95%CI 0.74−0.87、Ptrend=1.1×10−7)。