Article マイクロRNA:miRNAによるケモカインシグナル伝達系の調節が、生殖細胞の移動に対する遺伝的ロバストネスをもたらす 2011年3月1日 Nature Genetics 43, 3 doi: 10.1038/ng.758 マイクロRNA(miRNA)は、遺伝子の出力を制御する遺伝的可変抵抗器(レオスタット)として機能する。その調節因子(モジュレーター)としての役割から、miRNAが発生を方向付け、遺伝的ロバストネスをもたらすと仮定されてきた。本論文では、始原生殖細胞(PGC)の移動に遺伝的ロバストネスを与える、miRNAによるケモカインシグナル伝達系の新たな調節機構を明らかにする。ゼブラフィッシュのPGCは、ケモカインSdf1aに導かれて生殖腺へと移動するが、それは、Sdf1aリガンドの隔離受容体であるCxcr7bの調節を受けている。今回、miR-430がsdf1aおよびcxcr7のmRNAの量を調節していることを見つけた。 そしてターゲットプロテクター(miRNAの標的部位を保護する一本鎖修飾RNA)を用いた解析を行い、miR-430による内在性のsdf1a(cxcl12aとしても知られる)とcxcr7bの調節について、以下のことを明らかにした。miR-430は、(i)既存の発現領域からsdf1aの発現を消失させ、その発現量変化を促す。(ii)デコイ受容体Cxcr7bのレベルを調節し、Sdf1aの過剰な減少を回避する。(iii)ケモカインシグナル伝達系構成遺伝子の遺伝子量の変動を減少させ、PGCをその行き着くべき正しい位置へと確実に移動させる。上記の研究成果は、miRNAを介した調節が失われることで、通常はその影響がやわらげられている、発生異常の原因となる遺伝子変化が露呈することを示唆している。 Full text PDF 目次へ戻る