Letter 肝細胞がん:肝細胞がんゲノムの高解像度な特徴付け 2011年5月1日 Nature Genetics 43, 5 doi: 10.1038/ng.804 肝細胞がんは、最も一般的なウイルス関連がんの1つで、世界中のがんによる死亡原因の第3位を占める。C型肝炎ウイルス陽性の原発性肝細胞がん(カバー率36倍)と、同じ患者からの対応するリンパ球(>カバー率28倍)についての大量並列塩基配列決定によって、腫瘍ゲノムに11,000個以上の体細胞性塩基置換を同定した。それらの置換においてはT>C/A>G型の塩基置換が多く認められる一方で、非転写鎖と比較して転写鎖でT>C塩基置換が減少していることから、同時にDNA修復が選択的に行われていることが示唆された。遺伝子アノテーション・エンリッチメント解析から、検証された63個の非同義塩基置換はリン酸化タンパク質遺伝子に多いことが明らかになった。我々はさらに22個の体細胞性染色体再編成を同定・検証し、転写調節(BCORL1-ELF4)あるいはプロモーター活性が変化した4個の融合転写産物を明らかにした。配列決定の深度を高めて(>カバー率76倍)全エキソームの塩基配列決定を行うことで、腫瘍細胞の一部にTSC1のナンセンス置換が起こっているを明らかにした。このようなウイルス関連がんゲノムの最初の高解像度での特徴づけから、腫瘍内の遺伝学的な異質性とともに、これまでにはわかっていなかった変異の特徴的なパターン、染色体内再編成および融合遺伝子が明らかにされた。 Full text PDF 目次へ戻る