Letter 脳容積:12q14および12q24における頻度の高い 変異は海馬容積に関連している 2012年5月1日 Nature Genetics 44, 5 doi: 10.1038/ng.2237 老化に伴って海馬の容積が減少するが、その減少の度合は、アルツハイマー型認知症や血管リスク因子によって加速する。今回、認知症症状の見られない集団(計9,232人)を対象とし、海馬容積減少についてのゲノムワイド関連解析(発見解析)を行ったところ、P値が4.0×10–7未満である、46のSNPが4か所の座位に見つかった。これとは別の2種類の集団(計2,318人)に対して再現性を調べたところ(追試解析)、12q14のMSRB3-WIF1内部(発見および追試、rs17178006、P=5.3×10–11)と、12q24のHRK-FBXW8近傍(rs7294919、P=2.9×10–11)における関連を確認した。これら以外に関連が認められたのは、2q24のDPP4内部のSNP(rs6741949、P=2.9×10–7)と、9p33の ASTN2内部の9つのSNP(rs7852872、P=1.0×10–7)であった。そしてこれらの領域も、12番染色体領域と同じく、発見解析の場合と比べて平均年齢が1/3若く、また多種類のグループで構成される集団(計7,794人)に対する関連解析で、海馬容積の減少との関連を示した (P<0.05)。ASTN2のSNPについては、ほとんどが別個の集団(計1,563人)に対する関連解析から、認知機能低下との関連も示唆された。上記の関連は、アポトーシス(HRK)、発生(WIF1)、酸化ストレス(MSR3B)、ユビキチン化(FBXW8)、神経細胞移動(ASTN2)にかかわる遺伝子、さらには、糖尿病・新治療薬の標的酵素(DPP4)の遺伝子に関係している。このことは、海馬容積と、おそらく認知機能低下および認知症の発症リスクについての、新たな遺伝的影響を示唆するものである。 Full text PDF 目次へ戻る