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肝細胞がん:体細胞変異とコピー数変化の統合的解析により肝細胞がんの鍵となる遺伝子と経路を同定した

Nature Genetics 44, 6 doi: 10.1038/ng.2256

肝細胞がん(HCC)は原発性肝臓腫瘍のなかで最も頻度が高い。125例のHCCの高密度コピー数解析を実施し、うち24例について全エキソン配列解析を行った。その結果135のホモ接合性の欠失を認め、また機能的に重要と予測される遺伝子に994の体細胞変異を同定した。これまでにHCCで報告されていない4つの遺伝子(ARID1ARPS6KA3NFE2L2IRF2)において、新規の変異を複数例において同定した。機能解析によりIRF2にはがん抑制機能があり、またB型肝炎(HBV)に関連する腫瘍において特異的に見られるこの遺伝子の不活性化が、TP53の機能を障害することがわかった。これに対し、アルコールに関連した腫瘍においては、クロマチン修飾タンパク質の不活性化が頻繁かつ最も多く起こっていた。さらに特定の遺伝子(RPS6KA3-AXIN1NFE2L2-CTNNB1)において見られる変異の関連は、肝臓発がんにおいてWnt/βカテニンシグナルが、酸化的ストレス代謝とRas/マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)経路の両方と協調して働いていることを示唆している。本研究はHCCにおける体細胞変異に新たな洞察を与え、がん遺伝子の変異と、特定のリスク因子に関連するがん抑制遺伝子の変異が相互作用していることを示している。

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