Analysis
症例対照研究:既知の共変量が組みこまれると、症例対照研究における遺伝子の影響に対する検出力を低減しうる
Nature Genetics 44, 8 doi: 10.1038/ng.2346
ゲノムワイド関連解析(GWAS)とは、遺伝子に生じた変異(バリアント)と病態との関連を、通常はロジスティック回帰モデルによって探し出す手法である。その際、性別や、既知の重要な遺伝学的要因が共変量(covariate)としてしばしば存在する。ここでの遺伝学的要因というのは、疾患感受性に影響することがわかっているが、検定対象の遺伝子型とは集団レベルで無関係な共変量である。本論文では、既知の共変量をモデルに組み入れることにより、有病率が数%に満たない場合においては、検定対象の関連を同定する検出力が大幅に低減することを、理論的に、最近行われた多発性硬化症、乾癬、強直性脊椎炎のGWASデータを用いて示す。このような共変量を組み入れることで、遺伝子の変異の影響に対する検出力が減少するか増大するかは、対象となる疾患の有病率をはじめとするさまざまな因子によって決まる。頻度の高い疾患(有病率が20%を超える疾患)の場合には、共変量の組み入れによって検出力が上昇するが、稀な疾患では新たな遺伝的関連についての検出力が低下することがしばしばある。