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黒色腫:エキソーム塩基配列決定から黒色腫において頻発するRAC1の体細胞変異が同定される
Nature Genetics 44, 9 doi: 10.1038/ng.2359
我々は、最も死亡率の高い皮膚がんの一種である黒色腫について、147例の黒色腫のエキソームを配列決定することにより、黒色腫における変異の全体像の特徴を明らかにした。日光暴露を受けた黒色腫は、日光から遮蔽された黒色腫(末端性黒色腫、粘膜黒色腫およびブドウ膜黒色腫)よりも、紫外線(UV)様のC>T体細胞変異が非常に多かった。新しく同定されたがん遺伝子の中に、セリン/スレオニンホスファターゼをコードするPPP6Cがある。PPP6Cの変異は、日光暴露を受けた黒色腫の12%、また、BRAFあるいはNRASに変異のある腫瘍においてのみに排他的に見られ、そのすべての変異が活性化部位に集中していた。注目すべきは、日光暴露を受けた黒色腫の9.2%に、UVシグネチャーである、RAC1の活性化変異を同定したことである。この活性化変異は、日光暴露を受けた我々の黒色腫コホートで、BRAFおよびNRASの変異に続き、3番目に高頻度の変異で、高度に保存されたスイッチIドメインのPro29をセリンに変化させる(RAC1P29S)。RAC1P29Sの結晶構造解析、生化学的および機能的な研究から、この変化が、保存されたプロリンによるコンホメーションの制限を解放すること、そしてその結果、RAC1の下流のエフェクターへの結合が増加し、メラノサイトの増殖と移動を促進することが示された。これらの知見は、RAC1シグナル伝達の下流のエフェクターの薬理学的阻害に治療効果がある可能性を浮上させる。