Letter 微生物ゲノム:ソンネ菌Shigella sonneiのゲノム塩基配列決定と系統解析から、この菌は近年においてヨーロッパから世界的に広まったことが示唆される 2012年9月1日 Nature Genetics 44, 9 doi: 10.1038/ng.2369 赤痢菌Shigellaはヒトの腸管の粘膜に侵入し下痢を起こす、ヒトに適応した大腸菌であり、少量の便から口へという経路で感染し広まっていく。歴史的には、ソンネ菌S. sonneiは主に先進国の下痢の原因であったが、現在では開発途上国の問題となってきている。そうした国では、経済発展が進み、水質の改良が行われつつある地域で、ソンネ菌が、多様なフレクスナー菌Shigella flexneriと置き換わっているようである。古くからの研究では、ソンネ菌は遺伝的に保存されたクローンであることが示されている。ここでは、世界中に広がった132の菌株の全ゲノムの塩基配列決定を行ったので報告する。これについて系統解析を行うと、現在のソンネ菌の集団は500年前より最近に存在していた共通の先祖に由来しており、そこから独自の特徴を持ったいくつかの系統に枝分かれしたことが示唆される。この解析から、この枝分かれの大部分はヨーロッパで起こり、それに続き、単一の多剤耐性菌系統の急速な進化・世界的な普及が起こり、最近になっていろいろな国々の地域的な病原菌集団として定着したことが大きいと示唆される。 Full text PDF 目次へ戻る