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マラリア:サルマラリア原虫Plasmodium cynomolgiのゲノム配列から、三日熱マラリア原虫とサルマラリアのクレードを理解するうえでの手がかりが得られる

Nature Genetics 44, 9 doi: 10.1038/ng.2375

アジア旧世界サルを自然宿主としてマラリアを発症させるサルマラリア原虫Plasmodium cynomolgiは、三日熱マラリア原虫Plasmodium vivaxの姉妹分類群である。ここで三日熱マラリア原虫は、アフリカ以外におけるヒトへの感染発症率が最も高い原虫種である。P. cynomolgiは、表現型特性、生物学的特性、遺伝学的特性に、三日熱マラリア原虫と多くの共通点をもつ。そこで本論文では、3種類のP. cynomolgiの概要ゲノム配列を決定し、これらのゲノム配列と三日熱マラリア原虫のゲノム配列、さらにこれまでに塩基配列が解読されているサルマラリア原虫Plasmodium knowlesiゲノム配列について、比較解析を行った。その結果、サルマラリアのクレードに属するゲノムには、ヒトの免疫機構からの回避や宿主の赤血球内への侵入に関わる多重遺伝子ファミリーにおけるコピー数変異(CNV)に特徴的な違いがあることがわかった。 また、P. cynomolgiゲノム全体に存在するSNP、マイクロサテライト、CNVの染色体位置を同定し、遺伝子多様性の地図を作成した。これによって、これらのマラリア原虫の、特定の形質や集団について解析することが可能となる。今回のサルマラリア原虫P. cynomolgiゲノムの塩基配列決定は、このサルマラリアが三日熱マラリアの病態モデルになりうることを明らかにし、また、軽視されがちな三日熱マラリアに対する注意を喚起するうえで重要なステップとなった。

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