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iPS細胞とメチル化:体細胞がリプログラミングされてiPS細胞に誘導される際にはH3K9のメチル化が必ず起こる

Nature Genetics 45, 1 doi: 10.1038/ng.2491

人工多能性幹細胞(iPS細胞)が特定の因子によって樹立される過程において、その段階的な経過については不明なところが多い。本論文では、ヒストンH3の9番めのリシン(H3K9)のメチル化が、pre-iPS細胞の状態で維持されるかどうかを決めている主なエピジェネティック修飾であり、このリシンが脱メチル化されることで、完全にリプログラミングを受けたiPS細胞となることを示す。まず、分化多能性を示すが多能性維持のためのコアネットワークを活性化しない、一連の、安定pre-iPS細胞株を作製した。ここで、これらのpre-iPS細胞株では、ビタミンCによるiPS細胞樹立効率の上昇が変わらず認められた。続いて、pre-iPS細胞の状態でリプログラミングを停止させる重要なシグナル伝達分子として、骨形成因子(BMP)を血清中に同定した。さらに、BMPの下流に位置する標的因子としてH3K9メチルトランスフェラーゼ(メチル化酵素)を同定し、作用機構的には、この酵素がH3K9特異的デメチラーゼ(脱メチル化酵素)とともに、多能性を担うコアネットワーク構成遺伝子を含むゲノム領域におけるH3K9メチル化の状態を制御することで、pre-iPS細胞の細胞運命に対するオン・オフのスイッチとして機能することを明らかにした。今回の研究成果は、pre-iPS細胞が、ゲノムのリプログラミングという行程の途上に必ず存在する、エピジェネティックな修飾による標識の1つであることを明らかにしただけでなく、細胞運命についてのエピジェネティックなリプログラミングの機序についての手がかりを与えるものである。

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