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パンダゲノム:ジャイアントパンダの全ゲノム塩基配列決定から、集団動態の推移や地域別適応度についての手がかりが得られた

Nature Genetics 45, 1 doi: 10.1038/ng.2494

パンダの系統はその発端を中新世後期にさかのぼり、最終的には唯一の現生種であるジャイアントパンダ(Ailuropoda melanoleuca)に至っている。地球規模の気候変動や人為的な環境攪乱が動物集団(個体群)の動態を方向付けると認識されてはいるものの、これらがパンダ集団の動態にどのような影響を与えるかについてはほとんど判明していない。今回、34頭のパンダの全ゲノムを平均4.7倍の深度で塩基配列決定した。得られたデータセットを、これまでに、高深度に塩基配列決定されているパンダゲノムとともに用いて、パンダ集団の動態について、その発端から現在までの連続的な推移を再構築した。その結果、2度の集団拡大、2度のボトルネック、2度の集団分岐が明らかになった。この事実は、世界規模の気候変動が何百万年間のパンダ集団の変動を推進するうえで最も重要な要因であったことを示す一方で、最も近い時期に起こった集団の分岐および深刻な減少の原因は人間の活動であることを示唆するものであった。さらに今回の研究成果から、現生パンダの集団には異なる3種類が存在し、それぞれが環境への遺伝的な適応を示すことが判明した。そして、これら3種類のパンダ集団は例外なく、近々の3,000年の間に、ヒトによる活動によって悪影響を受けているのである。

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