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進化:結核菌Mycobacterium tuberculosisの世界的な蔓延は現生人類のアフリカからの移動と新石器時代の分布拡大とともに起こった

Nature Genetics 45, 10 doi: 10.1038/ng.2744

結核は、17世紀から19世紀にかけての西欧諸国における死亡原因の20%を占めていた。そして現在でもなお、発展途上国における高い死亡率の原因の1つであり続けている。その他の感染性疾患と同様に、ヒト感染性結核が初めて出現した時期は、Neolithic Demographic Transition(新石器時代における人口動態推移)と関係があるとされてきたが、昨今の研究結果により、それ以前ではないかと指摘された。このたび、結核菌群(M. tuberculosis complex:MTBC)の259株に対して全ゲノム塩基配列解析を行い、このデータからMTBCの全世界における遺伝的多様性を解析し、その進化の推移を再現した。合租解析の結果、MTBCはおよそ7万年前に出現し、解剖学的な観点から見て現生人類とされるヒト属のアフリカからの移動とともに各地に広がり、新石器時代におけるヒトの人口密度の増加によって感染が拡大したことが明らかになった。さらに、この長期にわたる共進化の推移は、MTBCが呈する、宿主の密度が低い場合にも高い場合にも適応して進化してきたという特徴と矛盾がなかった。

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