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遺伝子発現:マイクロRNAおよびその標的の発現が同位相であることによる発現振動の抑制
Nature Genetics 45, 11 doi: 10.1038/ng.2763
複雑な体を持つ多細胞生物の発生では、遺伝子発現が精密に時空的制御されていることが必要である。このたび線虫Caenorhabditis elegansにおいては、およそ2,000の転写産物が幼虫の発育段階の移行と同じ位相で発現振動(一定の時間周期で発現変動)していることを見つけた。一方、何千もの遺伝子は、既知の発育タイミング調節因子と同様に、時間勾配に従って(時間依存的に)発現していた。個々の線虫における転写産物の量を調べたところ、マイクロRNA(miRNA)lin-4が周期的に発現することで、標的であるlin-14の発現振動が抑えられ、lin-14の時間勾配に従った発現が維持されることを見つけた。そして、このmiRNAによるその標的の発現振動の抑制が、両者の周期的な発現が同じ位相である場合に最適であることを明らかにした。このようなmiRNAが仲介するインコヒーレントフィードフォワードループは、生物の発生に際して有害となる可能性のある、遺伝子発現のばらつきを小さくするための強力なフィルターとして機能しているのではないかと考える。