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乳がん:ホルモン療法抵抗性乳がんにおけるESR1のリガンド結合ドメインの変異
Nature Genetics 45, 12 doi: 10.1038/ng.2822
乳がんの70%はエストロゲン受容体(ER)を発現しており、この大部分はERの抑制に感受性である。しかしこのうちの多くは、不明の原因により、転移先ではエストロゲンの作用に抵抗性になる。我々はER陽性転移性乳がんの2つの独立したコホートについて徹底的な遺伝解析を行い、80症例中14例で、リガンド結合ドメイン(LBD)に影響を及ぼすESR1の変異を見つけた。これら変異は高い頻度で再発し、p.Tyr537Ser、p.Tyr537Asn、p.Asp538Glyへの変換をもたらす。分子動力学シュミレーションから、Tyr537SerとAsp538Gly変異の構造は変異アミノ酸のAsp351との水素結合に関与し、その結果、受容体は構造的に作動薬(アゴニスト)に結合しやすくなることが示唆された。このモデルに合致して、変異受容体はホルモンがなくともER依存性の転写や増殖を駆動し、ER拮抗因子の効果を弱める。これらのデータはLBD変異型のERはホルモン療法に対する臨床的抵抗性を起こすことを示し、強力なER拮抗薬が高い治療効果をもたらすことを示唆している。