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インスリン:エキソームアレイ解析によるインスリンのプロセシングや分泌に影響する新たな座位および頻度の低い多様体(バリアント)の同定
Nature Genetics 45, 2 doi: 10.1038/ng.2507
インスリン分泌はグルコースのホメオスタシスに決定的な役割を果たし、インスリン分泌が十分量でないことが2型糖尿病の特徴である。全ゲノム関連解析(GWAS)により、これまでにインスリンのプロセシングおよび分泌に関係する座位が同定されてきた。ところが、これらがどのような遺伝的因子であるのかは、大部分についてはいまだに不明である。そこで、頻度が低い〔マイナー対立遺伝子頻度(MAF)が0.5〜5%〕か、まれな(MAF < 0.5%)非同義変異(多様体)を検討するため、イルミナ社のHumanExome Beadchipを用いて、糖尿病ではないフィンランド人男性8,229人のエキソームアレイデータを分析した。その結果、空腹時プロインスリン値に関連するコード領域の低頻度変異を、GWASですでに明らかになっていたSGSM2および MADDの座位に同定した。さらに、空腹時プロインスリン値、もしくはインスリン分泌指数に関連する変異が生じる3つの新たな遺伝子、TBC1D30、KANK1、PAMを同定した。また、単一多様体を対象にした関連解析、および遺伝子を対象にした関連解析の結果の解釈には、非コード領域に存在するSNPが、近傍とメガ塩基離れた位置との両方に影響を与える可能性を考慮する必要があることも示した。今回の研究成果は、エキソームアレイ遺伝子型判定が、複数の座位によって決定される形質に関係している低頻度多様体を同定する有用な手法であることを実証するものである。