Article 進化:ウミヤツメ(Petromyzon marinus)ゲノムの塩基配列決定がもたらした脊椎動物の進化への洞察 2013年4月1日 Nature Genetics 45, 4 doi: 10.1038/ng.2568 ヤツメウナギ類は、約5億年前に我々の系統から分岐した太古の脊椎動物系統の1つである。現存の脊椎動物の中でも最も深い分岐点から派生したグループであるがゆえに、その一種であるウミヤツメ(P. marinus)のゲノムは、まさに脊椎動物ゲノムの成立過程や脊椎動物の生物学的基本原理を知るための格好の解析対象である。本論文では、ウミヤツメの全ゲノム配列を初めて塩基配列決定およびアセンブリした結果を示す。反復配列およびGC含量が高いこととともに、近縁種の大規模配列情報が存在しないことにより、解析は困難をきわめた。解析の結果、ヤツメウナギに至る系統と顎口類系統とが分岐する以前に全ゲノム重複が2回生じていたらしいことが示された。またゲノムアセンブリは、ミエリン鞘を構成するタンパク質の起源や四肢のもととなる鰭の発生など、脊椎動物の体制の礎となる重要な形質が獲得された経緯を明らかにするのに有用なものである。今回のウミヤツメゲノムは、脊椎動物の起源および現存の他の脊椎動物ゲノムの成立過程を推測するうえでの重要な情報となるであろう。 Full text PDF 目次へ戻る