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食道腺がん:頻発するドライバー事象と変異の複合現象を食道腺がんのエキソームならびに全ゲノム塩基配列決定により明らかにする
Nature Genetics 45, 5 doi: 10.1038/ng.2591
最近の30年間で食道腺がん(EAC)の発生率は600%上昇した。EACの5年生存率はおよそ15%であり、その新規治療標的を見つけることはきわめて重要である。EACの腫瘍-正常部ペア149組について全エキソーム塩基配列決定を行い、変異スペクトラムを分析した。149組のうち15組については全ゲノム塩基配列決定も行った。AAの2塩基配列の位置でA > Cの塩基転換が高頻度で起こっているという変異パターンを見つけた。エキソーム解析データの統計的解析により、有意に変異した遺伝子26個を見つけた。これらのうち5つ(TP53、CDKN2A、SMAD4、ARID1A、PIK3CA)は以前からEACとの関連が示唆されていた。新たに変異が見つかった遺伝子にはクロマチン修飾因子や寄与因子の候補であるSPG20、TLR4、ELMO1、DOCK2がある。EACによるELMO1の変異を機能解析すると、細胞浸潤性が増強されていることがわかった。したがってEACのがん化に寄与する因子としてRAC1経路の活性化の可能性が考えられる。