Letter
腺様嚢胞がん:腺様嚢胞がんの変異の全体像
Nature Genetics 45, 7 doi: 10.1038/ng.2643
腺様嚢胞がん(ACC)はヒト悪性腫瘍の中で最も解明が遅れている。この侵攻性の唾液腺がんは、根治的治療のかいなく、再発および転移することが多く、また、有効な化学療法レジメンも知られていない。本論文では、ACCの変異の全体像を決定したこと、およびACC腫瘍とマッチした正常試料の60対についてのエキソームないしは全ゲノムの配列を報告する。これらの解析から、エキソンの体細胞変異率が低いこと(メガ塩基あたり0.31個の非サイレント変異)、および変異の多様性の範囲が広いことが明らかになった。特に、SMARCA2、CREBBP、KDM6Aのような、クロマチン状態の調節因子をコードする遺伝子の変異が見つかったことから、ACCの腫瘍形成にはエピジェネティックな調節異常の関与が示唆された。また、DNA損傷応答やプロテインキナーゼAシグナル伝達において中心となる遺伝子の変異も、ACCの腫瘍形成過程に関与している。我々は、MYB-NFIB転座およびMYB関連遺伝子の体細胞変異を観察し、これらの異常の役割がACCにおいて決定的に重要な事象であることを確固たるものにした。FGF-IGF-PI3K経路に頻発する変異(30%の腫瘍)が明らかになったことから、これが治療の新しい道になるかもしれないと考えられる。まとめると、我々の観察は、ACCの理解や新しい治療法探索のための分子基盤を確立した。