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多剤耐性菌:異なる系統株に由来する結核菌の推定変異率が薬剤耐性結核出現の大幅な差を予測する
Nature Genetics 45, 7 doi: 10.1038/ng.2656
結核の感染防御対策では、結核菌 Mycobacterium tuberculosisの一部系統でなぜ選択的に多剤耐性が認められるのかが大きな問題になっている。我々は、系統株Lineage 2(東アジア系統株および北京亜系統株)由来のM. tuberculosis系統ではLineage 4(欧米系統株)由来の系統と比較してin vitroでの薬剤耐性獲得率が高く、それは高い変異率に起因することを明らかにした。また、そのin vitroでの変異率とヒト体内での変異率との相関性が高いことも、臨床分離株の全ゲノム塩基配列決定によって明らかにした。さらに、薬剤感受性の系統株Lineage 2に感染した患者が診断の時点では多剤耐性細菌を保有している確率が極めて高いことが、観察された変異率の差で予測されることも、確率的数学モデルによって示された。今回のデータは、薬剤耐性結核の出現を予防するための介入では、細菌のリスク因子と治療関連のリスク因子の両方を標的にすべきであることを示唆している。