Analysis
APOBEC:複数のヒトがんにおけるAPOBEC3Bによる変異誘発の証拠
Nature Genetics 45, 9 doi: 10.1038/ng.2701
数千個もの体細胞変異が大半のヒトがんに生じているが、その原因はほとんど解明されていない。最近、我々は、DNAシチジンデアミナーゼAPOBEC3Bを発現する乳がんでは、変異荷重の最大半分までがAPOBEC3Bに起因することを示した。本論文では、APOBEC3Bが、複数の種類の腫瘍において、広く変異誘発の原因となっているかどうかについて検討する。我々は、4,800以上のエキソーム配列解読データおよび1,000,000以上の体細胞変異データを用いて、19種類の異なるがんにおける遺伝子発現データや、変異のパターン、変異の分布および変異荷重について解析を行った。特に、APOBEC3Bは、少なくとも6種類の異なるがん〔膀胱がん、子宮頸がん、肺がん(腺がんおよび扁平上皮細胞がん)、頭頸部がん、乳がん〕において、発現上昇が見られること、また、APOBEC3Bの優先標的配列には、変異の見られることが多く、それらの変異はクラスターを形成していることが多いことに注目すべきである。これまでの遺伝学的研究、細胞研究および生化学的研究を考慮して、これらの知見を解釈すると、このような全体的な解析から、APOBEC3Bによって触媒されるゲノムのウラシルの損傷が、複数の異なるがんにおける分散型およびクラスター型の両方の変異の大部分の原因であることが、最も簡潔に結論される。