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繊毛:繊毛の欠損は常染色体優性多発性嚢胞腎の遺伝学的モデルにおいて嚢胞の成長を抑制する
Nature Genetics 45, 9 doi: 10.1038/ng.2715
腎臓の嚢胞の発生は、繊毛におけるポリシスチンの不活性化(繊毛は、ポリシスチン以外は無傷な状態)の後、あるいは鞭毛内輸送関連タンパク質の不活性化による繊毛の完全な除去の後に起こる。発生中および成体の腎臓と肝臓において、ポリシスチンの条件付き不活性化と繊毛の除去とを組み合わせることで、これらの2つの異なる過程における嚢胞形成の機構を検討した。構造的に無傷な繊毛が欠損することにより、ポリシスチン不活化後の嚢胞の成長が抑制されること、また、嚢胞性疾患の重症度は、ポリシスチンタンパク質の欠損が最初に起こってから、その後、繊毛が退縮するまでの時間の長さに直接関係することが分かった。この繊毛依存的な嚢胞の成長は、MAPK/ERK、mTORあるいはcAMPの経路の活性化によっては説明されず、また、繊毛の完全な欠損の後に嚢胞が成長する機構とは異なっていると考えられる。これらのデータは、ポリシスチン依存的な抑制および繊毛依存的な活性化によって定義される新しい経路が存在し、急速な嚢胞の成長を促進することを明確に示すものである。