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てんかん:GRIN2Aの変異はてんかん性失語症スペクトルを引き起こす
Nature Genetics 45, 9 doi: 10.1038/ng.2727
てんかん性失語症候群(EAS)はまれな疾患だが、原因不明の重篤なてんかん性脳症の一群である。脳波図(EEG)に特徴的なパターンを示し、特に言語能力に影響を及ぼす発達退行を呈する。GRIN2Aを含むゲノム領域にまれに見られる欠失があり、神経発達疾患に関係することが見つかっている。今回、さまざまなてんかん症候群を伴うてんかん性脳症の発端者519人における、GRIN2Aの疾患発症にかかわる役割を明らかにしようと試みた。その結果、疾患が分離する家系においてGRIN2Aの変異を持つ発端者4例を特定した。注目すべきは、これらの4家系すべてでEASの発症が見られたことである。このような変異型GRIN2Aを有するEAS患者は、てんかん性失語症症候群患者の9%に相当した。これ以外のてんかん性脳症(n=475)の場合、また中心側頭部に棘波をもつ良性小児期てんかんの発端者(n=81)の場合においてはいずれも、発症原因となるような変異型GRIN2Aは検出されなかった。今回の研究成果から、知りうる限りでは最初の、単一遺伝子の変異が原因となるEAS発症リスクが判明した。GRIN2Aの変異は、EAS患者に限定されており、EASの診断検査や治療に大いに有用であり、この機能退行(もしくは停止)性が見られる病態の発症原因についての新しい手がかりとなるものである。