Analysis

乳がん:ゲノム統合解析によって明らかになった、ヒト乳がん「ルミナル」サブタイプの増殖ドライバー遺伝子

Nature Genetics 46, 10 doi: 10.1038/ng.3073

ヒトの乳がん発生に関わる分子ドライバーを明らかにするには、いろいろな様式のデータの統合を可能にするような解析手法が必須であるし、特定の遺伝子異常が及ぼす機能への影響を正しく解釈することが必要である。本論文では、発がん経路の活性に関連する(総数52の)遺伝子発現シグネチャーをフレームワークとして、ゲノムデータの統合解析を行い、DNAのコピー数変化を調べた。そして同時に、RNA干渉によるゲノムワイドのスクリーニングデータを解析した。その結果、サブタイプ特異的なDNA増幅を見いだし、増幅された遺伝子群の中に、発がんに必須の遺伝子群、すなわち、重要なドライバー遺伝子群を同定した。これらの遺伝子群には、既知および新規の発がん調節遺伝子が含まれていた。同定された遺伝子群のうち8遺伝子は、細胞増殖に必須の遺伝子であり(FGD5METTL6CPT1ADTX3MRPS23EIF2S2EIF6SLC2A10)、効果的な治療選択肢があまりない高増殖性のルミナル(管腔上皮細胞)型の乳腺腫瘍患者において、特異的な増幅が見られた。ゲノムデータセットを統合して解析するという、他の多くのがんにも適用可能な解析戦略は、治療標的を増幅産物中に同定する方法として使用可能であろう。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度