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濾胞性リンパ腫:統合ゲノム解析によって明らかになった、濾胞性リンパ腫の発生および進展を促す高頻度変異とその進化パターン

Nature Genetics 46, 2 doi: 10.1038/ng.2856

濾胞性リンパ腫は治療不可能な悪性腫瘍の1つで、病型変化(形質転換)が起こり、急激に成長するサブタイプである。この増殖の亢進は、腫瘍の進展に際して重要な意味を持つ事象である。本論文では、10種類の濾胞性リンパ腫およびその形質転換型の組み合わせ(ペア)について全ゲノムもしくは全エキソームの塩基配列決定を行い、続いて確認用コホートにおいて28の遺伝子についてディープシーケンシング(高読取り深度の塩基配列決定)を行った。その結果明らかになった、腫瘍の発生および形質転換に決定的な影響を与える重要な事象および進展過程について報告する。腫瘍の進展は、「多数(rich)」もしくは「少数(sparse)」の遺伝子変異を含む祖先共通先駆細胞クローン(CPC)によって起こっていた。そして、高頻度で起こる変異が、リンカーヒストン、JAK-STATシグナル伝達、NF-κBシグナル伝達、B細胞の分化を担う遺伝子群に見つかった。縦断的研究から、初期のドライバー変異がクロマチン調節遺伝子〔CREBBPEZH2KMT2DMLL2)〕に存在することが明らかになった。それに対して、EBF1およびNF-κBシグナル伝達の調節因子(MYD88およびTNFAIP3)の変異は、形質転換の時点で獲得されたことが判明した。まとめると、今回の研究によって、濾胞性リンパ腫の遺伝的基盤や、形質転換に関するクローンの動態について新たな手掛かりが得られると同時に、CPCに生じた重要な遺伝子変化を標的とする個人化治療が魅力的な治療戦略の1つであることが示唆された。

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