Analysis
変異と人口動態:有害変異による荷重は近年の人口推移の影響を受けない
Nature Genetics 46, 3 doi: 10.1038/ng.2896
ヒト集団の人口規模は、過去10万年間に大きな変化を遂げてきた。近年の人口の急激な増加もその1つである。こうしたヒトの人口動態が、有害変異の個人に与える影響(荷重)や、疾患変異の集団における頻度などにどのように作用するかについては、明らかになっていない。本論文ではまず、集団遺伝学的モデルを用いて、有害変異の平均荷重が、最近の人口動態による影響をおそらくほとんど受けないことを示した。このような予測の正しさを検証するために、西アフリカ系およびヨーロッパ系のアメリカ人における2種類のエキソーム配列のデータセットを用いて解析した。その結果、両者の集団に属する人たちは、極めて類似した有害変異の荷重を保有していることが判明し、予測の正しさが支持された。我々はさらに、多くの疾患では、次世代に継承される遺伝子の多様性に希少対立遺伝子が占める割合は大きくなさそうであることを示した。その結果、近年の人口増加の影響はあまり大きくないことが導かれた。しかしながら、適応度に直接影響する疾患の場合は話が別で、これらの疾患では極めて有害な希少変異が重要な役割をほぼ確実に担っており、最近の人口の増大が大きな影響を及ぼすと考えられる。