Letter

転写因子:転写因子の解離を直接測定することで、オペレーター占有という遺伝子調節についてのシンプルなモデルが除外された

Nature Genetics 46, 4 doi: 10.1038/ng.2905

転写因子は、染色体上のオペレーターの特定位置に結合することで、遺伝子発現を調節している。そして、転写の抑制のレベルは、リプレッサーのオペレーターへの結合の平衡状態によって完全に決定されていると、通常は考えられている。しかし、この推測はこれまで、生体細胞においては検証することができなかった。本論文では単分子追跡法を開発し、転写因子分子が染色体上のオペレーターの特定位置において、どの程度の期間、結合状態にあるかを測定した。その結果、大腸菌Escherichia coliの野生型lacオペレーターにおいて、lacリプレッサー二量体が平均5分間、結合状態を維持すること、そして結合親和性を増強した人工オペレーターの場合には解離速度は遅くなったが、結合速度に差が見られないことを明らかにした。この知見は、シンプルな平衡モデルを裏付けるものではない。平衡モデルとの矛盾は、例えば、転写開始によって系が平衡状態から外れると考えることで説明できる。転写因子の結合強度から遺伝子活性を推定する際には、このような影響を考慮する必要がある。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度