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血中脂質濃度:コード配列の多様性を網羅的に評価することで、総コレステロールおよび心筋梗塞リスクに影響する原因配列の候補をTM6SF2に同定した
Nature Genetics 46, 4 doi: 10.1038/ng.2926
血中脂質濃度は遺伝性心疾患のリスク因子であり、その疾患は治療可能である。コード配列の多様性をゲノム全域にわたって系統的に解析し、脂質形質に影響する新規遺伝子の同定、既知の脂質関連ゲノム領域(座位)の詳細な位置決定、さらに、低頻度で効果の大きいバリアント(遺伝子多様体)が存在するかどうかを調べた。まずエキソームアレイを用いて、ノルウェー人5,643人における80,137の多様なコード配列の遺伝子型を決定した。引き続いて、18のバリアントについて、ノルウェー人4,666人で遺伝子型を決定し、その結果、脂質形質に関連するコード配列が存在する10か所のゲノム領域を同定した(P<5×10−8)。このうちTM6SF2のバリアント(p.Glu167Lys)は、ゲノムワイド関連解析で脂質形質との関連がすでに報告されているゲノム領域に存在し、総コレステロール量に影響を及ぼし、心筋梗塞発症リスクに関連を示した。マウスにおいてTM6SF2の一過性高発現あるいはTm6sf2のノックダウンにより、血清の脂質プロファイルに変化が認められた。この変化は、ヒトにおいて観察されたTM6SF2と脂質形質との関連性に一致していた。すなわち、TM6SF2が、これまでNCAN-CILP2-PBX4(すなわち19p13)に存在するとされていた機能的遺伝子であることが明らかになった。今回の研究成果は、コード配列の多様性を系統的に調べる方法は、原因遺伝子候補を迅速に検出する方法であることを示すものである。