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神経膠腫:びまん性内在性橋膠腫のゲノム解析から、3種類の分子サブグループとACVR1の反復性活性化変異が明らかになった

Nature Genetics 46, 5 doi: 10.1038/ng.2936

びまん性内在性橋膠腫(DIPG)は小児の脳幹に発生する致死性の悪性脳腫瘍で、効果的な治療法はなく致死率は100%に近い。実施された治療の大半が不首尾に終わるのは、腫瘍の発生場所が人体にとって極めて重要な部位であることと、DIPG発症の分子機序が成人の脳腫瘍と似ているとの前提から治療を選択することに原因があると考えられる。最近の研究成果から本疾患に特徴的な遺伝的基盤が明らかになっており、患者の約80%にp.Lys27MetヒストンH3.3もしくはp.Lys27MetヒストンH3.1が見つかっている。しかしDIPGは、腫瘍発生の遺伝的因子が完全には解明されていない一疾患であるとの認識に変わりはない。DIPGの発症機序を理解するために、全ゲノム塩基配列決定に加えて、メチル化、発現、コピー数に関する特性解析を行った。その結果、DIPGが異なる分子的特徴を示す3種類のサブグループ(H3-K27M、silent、MYCN)に分類されることを見つけ、またDIPGの20%において、1型アクチビン受容体遺伝子ACVR1に影響を及ぼす、繰り返し起こる新たな活性化変異が存在することを明らかにした。ここでACVR1は、変異によって構成的に活性化されており、そのため、SMADのリン酸化と、アクチビンシグナル伝達の下流標的であるID1およびID2の発現亢進が引き起こされていた。上記の結果は、分子レベルではっきりと異なるDGIPサブグループの存在と、この治療不能の小児がんに対するこれまで知られていなかった治療標的を明らかにするものである。

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