Technical Report

ヒト集団遺伝学:複数のゲノム配列からヒト集団のサイズ(個体数)や分岐の変遷を推定する

Nature Genetics 46, 8 doi: 10.1038/ng.3015

世界中のヒト集団のゲノム完全配列が利用可能になったことで、組換えや変異を考慮して集団間の祖先関係をモデル化する、これまでにはなかった集団遺伝学的な推論手法が考案された。しかし今までのところ、これらの手法を適用して得られる、2万年から3万年前より最近の時代における進化の推移や、集団の分岐(分離)についての情報は限定的なものである。そこで本論文では、このような欠点を克服する新たな方法を紹介する。すなわち、複数のゲノム配列を対象にしたマルコフ合祖(MSMC)モデルによって、複数の個体で観察された変異のパターンを解析した。特に任意の2個体間の最初の合祖に注目した。世界の9種類の集団由来のゲノム配列に対してMSMCツールを適用した結果、アフリカ・ヨルバ人の祖先から非アフリカ人の祖先の遺伝的分岐(分離)が5万年よりかなり以前に始まったことが示唆された。また、南北アメリカ大陸への定住に際してのボトルネックや、アフリカ、東アジア、ヨーロッパに現在居住する集団の分裂が起こった時期といった、ほんの2千年前という最近のヒト集団の動態についての知見が得られた。

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